<ぎろんの森>水俣病と環境省の「聞く力」 - 東京新聞(2024年5月11日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/326484

 ぎろんの森は大型連休中、休載しましたので2週間ぶりとなります。皆さんはどんな連休を過ごされましたか。
 この期間中、いまだにこんなことをしているのか、と驚くことが起こりました。
 四大公害病の一つ、水俣病の患者・被害者団体と伊藤信太郎環境相との懇談で、団体代表者ら一部発言者のマイクの音が進行役の環境省側により消されてしまったのです。
 「時間超過」が理由のようですが、3分と区切った流れ作業のような発言機会では、患者・被害者が十分に思いを伝えられるのでしょうか。
 岸田文雄政権が掲げる「聞く力」とは相いれない乱雑な振る舞いです。前例踏襲も理由になりません。
 安倍晋三政権時代のように官僚が政権中枢に忖度(そんたく)するのも問題ですが、「聞く力」という岸田政権の方針が官僚に浸透していないことも問題です。環境相自身の謝罪も当然と考えます。
 そもそも問題の根源は、国が水俣病患者・被害者の苦しみと誠実に向き合わず、被害を訴えても水俣病と認定されない患者が、いまだに多くいることにあります。
 患者認定を巡る司法判断は揺れていますが、大阪地裁が昨年9月、未認定患者を水俣病と認め、国などに損害賠償を命じた際には、東京新聞は社説で「水俣病が公式に確認されてから67年(判決当時)が経過し、総数約1700人の原告も高齢化が進む。国は、他訴訟の結果を待つことなく、早期に(患者認定の)線引きを見直し、全面救済にかじを切るべきだ。でなければ、水俣病に終わりの日は来ない」と指摘しました。
 患者・被害者の話を聞くことは大切ですが、聞き流さず政策に反映しなければ意味がありません。政府は早急に全面救済に動くべきです。
 環境省の前身、環境庁が生まれたのは、工場排水や排出ガスを原因とする環境汚染で住民に健康被害が出た水俣病などの四大公害病がきっかけです。環境省は原点を忘れた振る舞いを改め、公害病の患者・被害者の救済にこそ力を入れるべきです。 (と)