<金口木舌>持ち時間3分、消される声 - 琉球新報(2024年5月10日)

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北中城村生まれ、101歳の喜屋武初子さんが大勢の前で初めて沖縄戦を語った。子を連れて大宜味の山中を逃げ、飢えに苦しんだ。収容所でも飢えた
▼「戦が憎らしい。どうしてもしないといけないかね」と紙面に載った言葉には続きがあった。「しなくてもいいのにまだパラパラーってしてる」。紙幅の都合で入らない、行間の余白のようでいて心に残る言葉は少なくない
水俣病の公式確認から68年。慰霊式を訪れた伊藤信太郎環境相との懇談で、水俣病患者連合の松崎重光副会長が話すマイクが途中で切られた。未認定のまま亡くなった妻の話をしていたが「持ち時間3分」で環境省職員が音を消した
水俣病を書いた石牟礼道子さんの「苦海浄土」は、原因企業のチッソ幹部や官僚、政治家を「ネクタイコンブ」と呼ぶ。彼らの標準語と、不知火の漁民の言葉は何度もすれ違ってきた。顔を出したのはそんな歴史か
▼問題から1週間、伊藤大臣は再び水俣を訪れ謝罪した。慰霊が形骸化して生きた言葉を置き去りにすれば、過去はますます遠ざかる。