<金口木舌>「命の格差」は認められない - 琉球新報(2023年3月2日)

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寝息を立てる子どもの頭をそっとなでる。普段は幸福感を得られるひとときだが、その夜は障がいのある我が子の将来をないがしろにされたように思い、心が重くなった

▼「命の格差」という、認められない言葉が浮かんでしまう。大阪地裁は27日、聴覚障がいがあった井出安優香さん=当時(11)=が死亡した事故で、将来得られたはずの「逸失利益」について、障がいを理由に全労働者の賃金平均の85%と判断した
▼事故によって将来の可能性を証明する機会を奪われた被害者に対して、酷に過ぎないか。両親は「障がいを持って生まれたからこそ何倍も努力してきた」と声を振り絞った
▼今回の判断でも、同種訴訟に比べれば高水準という指摘もある。ただ、懸命に生きた子どもの人生を、障がいという一点をもって軽んずるような判決は、両親の心情を踏みにじった
▼両親の弁護団は「現時点で障がい者の収入が低いのは、社会の側が障壁を除去できていないからだ」と批判した。社会全体の壁をなくしたい。問われているのは、司法だけではない。