<金口木舌>輝く命のために - 琉球新報(2023年2月9日)

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かつての学園ドラマ「3年B組金八先生」に「15歳の母」という話がある。中学3年の生徒が妊娠し出産する。学校がどう向き合うかを描いた

▼出産を控え、金八先生の提案が父母も交えた「愛の授業」だった。生命の源から説き「愛とは相手の命をいとおしむこと」と。そんな台詞(せりふ)が記憶にある
▼全国高校生読書体験記コンクールで知念高校3年の伊〓愛瑠(あいる)さんが一ツ橋文芸教育振興会賞を受賞した。テーマは「精一杯に輝く命のために」。産婦人科の現場を描く小説を通して助産師を志す夢を綴(つづ)った体験記を読み、約40年前のドラマが蘇(よみがえ)った
▼経済不安や母体の危険など命の現場はそれぞれに困難を抱える。それでも「全力で支えたい」と伊〓さんは記す。同時に社会全体も困難を支える度量を持ちたい。誰も取り残さない。社会的包摂と言おうか
▼「愛の授業」の後に生徒は、やがて母となる生徒に寄り添い支えた。くじけかねない過酷な境遇をおおらかに包み込めるのも社会の力の源だろう。共に育ち輝く。そんな営みを続け「いとおしい」命が増えるといい。

※注:〓は、しめすへんに「豊」