【政界地獄耳】「同盟」の定義に即してない日米関係 - 日刊スポーツ(2023年1月20日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202301200000036.html

★日米同盟という言葉が当たり前のように使われるが、そもそも同盟とは何だろうか。日本人なら日独伊三国同盟をまず頭に浮かべるのではないか。だが日米が同盟を結んだという歴史は教科書には載っていない。ではなぜ日米同盟は当たり前のように語られるのか。日米同盟という言葉が公式に使われたのは鈴木善幸内閣で、1981年5月のレーガン大統領との会談後の共同声明で日本の公式文書では初めて「同盟関係」という言葉が記された。

★直後の国会で“今は亡き”野党の強い追及に外相・伊東正義は「軍事的な何らかの関係のあるものを同盟というような言葉を使うのだということであれば、片務的とはいえ安保条約というのは軍事的に関係がありますから、同盟と使ってもいいと私は思う」と答弁している。同盟の定義は「複数国が団結し、敵国または仮想敵国に対抗する勢力を作り、それによって自らの国家集団の安全を保とうとする組織」といわれ、相互的なものとされていることを伊東は片務的としているが、そもそも同盟としての定義に即していない。1960年の日米安全保障条約締結(新安保条約)が日米同盟の始まりという見方もあるが、図らずも伊東はそれが片務的であると認めた格好になった。

★安保条約が相互的安全保障でないと同時に日米地位協定は極めて米国の都合に立った片務的なものでもある。それだけ見ても日米関係は同盟と呼べるだけの関係ではない。だがその答弁で伊東は外務事務次官・高島益郎と共に辞任。日米同盟とは経済、文化、社会など自由と民主主義、自由市場の経済体制という価値観が同じなので同盟と呼んでもいいのではないか、で世論を落ち着かせようとし、鈴木は最後まで日米同盟は軍事同盟ではないと言い続けた。首相・岸田文雄は鈴木や伊東ら大先輩が率いた自民党名門派閥「宏池会」の現会長だ。今、日米同盟といえば軍事同盟のことだけを指す。(K)※敬称略