【政界地獄耳】政治の仕事であり政治の力が届きにくいもの - 日刊スポーツ(2023年1月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202301040000032.html

★来月、相次いで力のこもったドキュメンタリーが公開される。いずれも我が国のこれからを見据えるに必要なテーマを丁寧に追いかけている映画だ。そしてそれらのテーマは本来政治の仕事である一方、政治の力が届きにくいものでもある。日々のニュースでは扱いきれない、追いかけきれない現実を、2つの映画はひるまずカメラに収めている。

★ひとつは「二十歳の息子」(島田隆一監督)。児童養護施設の子どもたちの自立支援団体「ブリッジフォースマイル」で働くゲイである主人公は、幼少期より施設に預けられ両親の顔を知らずに育った少年を身近で見てきたが、20歳の時に事件を起こし起訴されてしまう。彼の生活を立て直す手段として養子縁組を提案。そこに家族が生まれる。互いに距離感がつかめず、ぎこちない新生活が始まる。そのプロセスを監督は1年にわたって追いかけ続ける。「彼らの人生は社会によってさまざまな困難を強いられている。もし今、彼らのように生きる人たちが生きづらさを感じているようならば、それは我々が作り上げてきた社会の側に責任がある」と監督は言う。誰もがこの問いかけに考えをまとめるべき時期に来ているのではないか。


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★そして「生きる 大川小学校 津波裁判を闘った人たち」(寺田和弘監督)。東日本大震災宮城県石巻市の大川小学校は津波にのまれ全校児童の7割に当たる74人(うち4人はいまだ行方不明)と10人の教職員が亡くなった。津波発生から到達まで51分、学校にはスクールバスが待機、裏には山があったが多くの犠牲者を出した。なぜこんなことが起きたのか。親たちは子どもたちの最期を知りたかっただけだが、それには市、県を訴える国賠訴訟しか手がなく、裁判は損害賠償請求しか方法がない。親たちは子どもの命に値段をつけるところから苦悩する。親たちと2人の弁護士の闘いでもあった。10年にわたる裁判の記録とともに司法制度を問う、判決だけでなく、この10年間のプロセスを多くの人に感じてもらいたい。(K)※敬称略


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