【政界地獄耳】中曽根止めた後藤田理論を超えられるか - 日刊スポーツ(2022年12月20日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202212200000077.html

★「中曽根さんから私に、海上保安庁から武装した巡視艇、あるいは海上自衛隊の掃海艇を派遣したいという相談がありました。しかも同時に当時の外務審議官の栗山尚一君も私のところに来まして、相当強硬に、なんとしてでも自衛艦を出したい、と言ってきたことがあります。しかし私は、それは駄目だということで拒否をしたわけです。そのときに私が外務省に申し上げたのは、『どうしてもやりたいというならやってみろ、必ず俺が止めるから』と、そこまできつく言ったんです」。

★「中曽根さんからのお話があったときに、私が言ったのは、ペルシャ湾はすでに交戦海域じゃありませんか、その海域へ日本が武装した艦艇を派遣して、タンカー護衛と称してわれわれの方は正当防衛だと言っても、戦闘行為が始まったときには、こちらが自衛権と言ってみても、相手にすればそれは戦争行為に日本が入ったと理解しますよ、イランかイラクどちらかがね。そうすると他国の交戦海域まで入っていって、そこで俺は自衛だと言ってみても、それは通りますか、と言った。それがひとつです。もうひとつは、『あなた、これは戦争になりますよ、国民にその覚悟ができていますか、できていないんじゃありませんか、憲法上はもちろん駄目ですよ』と言った。そして、『私は賛成できません、おやめになったらどうですか』と申し上げたんです」。

★いささか長い引用だったが1987年(昭62)のペルシャ湾安全航行確保が問題となり首相・中曽根康弘、外務省、防衛庁、党の防衛族を巻きこんでの大論争になった第3次中曽根内閣の官房長官当時のことを98年に講談社から刊行された「情と理 後藤田正晴回顧録(下)」より抜き出した一文だ。「時代が違う」とか「今とは事情が違う」のは承知の上で、この後藤田の説明を今論破できる政治家はいるだろうか。(K)※敬称略