【政界地獄耳】住民を守る1番の政治手段は戦争しないこと - 日刊スポーツ(2022年12月17日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202212170000062.html

★今の自民党を見ると、非戦の努力よりも軍備増強とその財源ばかりが議論され、この先には「兵器はそろったが人手が足りない。次は徴兵だ」の議論が待ち受けることは容易に想像できる。首相・岸田文雄の言う「歴史的転換点」などない。我が国は憲法の理念に沿い平和を希求し、戦争を放棄するのではないのか。敵基地攻撃能力など専守防衛をはるかに飛び越える議論を反撃能力などと言い換えて国民を惑わす欺瞞(ぎまん)を説明に使っている。昨今はこの好戦派の理屈に抵抗する野党の声も少なく、立憲民主党などは「提案型」や「現実野党」などといった理屈で自民党の議論に賛同する動きすらある。

★14日、沖縄県議会で県知事・玉城デニーは一般質問で「何よりも一番大事なことは戦争をしないこと、させないことで、それが住民を守る一番の政治的手段だと訴えたい」と答弁した。またシンクタンク「新外交イニシアティブ」の「全てのミサイル施設を破壊することは不可能であり必ずミサイルによる報復がある。最も重要なことは、自衛隊在日米軍基地と周辺の民間人を相手の再反撃から守ること」とした。

★第2次大戦末期の1945年(昭20)、沖縄は日本軍と米英連合軍との決戦の地になり、沖縄での両軍および民間人を合わせた地上戦の戦没者は20万人といわれ、うち民間人は9万4000人余り。いまだ遺骨収集が続いている中で、政府自民党が相変わらず沖縄を戦場としか考えない思考回路の稚拙さも情けない。今こそあの惨禍を繰り返してはならないと声を上げる議員はいないのだろうか。沖縄にシェルターをつくるべきという議員たちに沖縄を再び戦場にしてはならないという覚悟はない。それどころか、沖縄で食い止めて本土を守るという発想だろう。玉城は本会議の答弁でこう続けた。「住民保護についても、国政の場で十分に議論をしていただく必要がある」。(K)※敬称略