【政界地獄耳】W杯 かき消されたドイツの抗議 - 日刊スポーツ(2022年11月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202211260000180.html

★過去にLGBTについて「生産性がない」と発言したり、性暴力被害を巡り、20年に「女性はいくらでもうそをつけますから」などと発言、野党が各委員会で再三指摘しているものの、謝罪・撤回を一切しない総務政務官杉田水脈の振る舞いについて24日の参院厚労委員会で、野党が首相・岸田文雄に更迭せよと問うと「過去の発言についてはご本人がしっかりと説明をしたうえで、今現在、政府の一員でありますので岸田内閣の方針に沿って取り組んでいただいていると、職責を十分に発揮して果たしていただきたい」とし政権は「老若男女、障がいのある方もない方も、全ての方が生きがいを感じられる多様性、包摂性を持つ社会の実現を目指す」と杉田の更迭を否定した。

★杉田を任命しただけでこの政権が差別主義者を容認していることに他ならないが、いつものように事の重大さに気付かず、のらりくらりとかわしている限り、ほかの内閣の一員の政治とカネの違法行為よりもずっと内外に与える影響は重大だ。同日夜、日本はワールドカップ(W杯)でドイツを破り大騒ぎとなったが、欧州連合EU欧州議会はこの日、開催国カタールの人権状況について、スタジアム建設に従事した外国人労働者ら数千人が死亡したとして調査の実施を要求。国際サッカー連盟FIFA)については「汚職が横行し、組織的で根深い」と指摘。ドイツは試合前の記念撮影の際に反差別を訴える腕章の着用を国際サッカー連盟が認めなかったことに抗議し11人が口を手で覆った。

★日本では勝利に沸きこのニュースはかき消されがちだが、そのドイツでさえ試合の中継の解説をしていた本田圭佑から「ちょっといまのは性格悪い。ばかにしたような走り」と日本との試合を“なめていた”と感じさせるシーンがあった。差別は知らず知らずに、気付かないうちに、相手が感じるものもある。だからこそ、問題の発言や行動、態度を戒め、その都度立ち止まり検証すべきでメディアはそれを怠ってはならないはずだ。改めて言おう。岸田内閣は杉田を擁護している限り差別を容認する政権だ。(K)※敬称略