【政界地獄耳】海保と海自 強引な政治が現場に混乱招く - 日刊スポーツ(2022年11月23日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202211230000143.html

自民党政調会長萩生田光一は21日、海上保安庁の防災基地での訓練を視察し「最前線で第三国と接する機会のある海上保安庁の皆さんの装備がどうあるべきか、安全保障のうえでも海上保安庁に果たして頂ける役割は大きなものがあると再認識した」と発言した。自民党は海保の装備や組織自体を“総合的防衛力”という表現で一体化させようとしている。

★さかのぼる11日には防衛相・浜田靖一自衛隊法では有事の際に海保を防衛相の統制下に入れることができると定められていることを前提に、日本が外国から攻撃を受ける「武力攻撃事態」に備え、防衛相が海保を指揮下に置く「統制要領」策定に前向きな考えを示している。それを受ける形で16日、海保庁長官・石井昌平は「統制要領」策定に関し「政府として具体化について検討していくと承知している。海保としても積極的に参画したい」と述べる一方、海保が重要視する「非軍事的性格を保ちつつ、適切な役割分担を確保し、漁船の保護、船舶の救難などを実施する」とした。

★政治家と幹部の中ではつじつまが合っているつもりだろうが、海上保安庁海上自衛隊は歴史と認識が大きく違う。戦後すぐ、1948年(昭23)、海上保安庁設立。当時GHQは旧軍人の公職を禁止しており同庁は旧軍人なしで立ち上がった。50年、警察予備隊設立。52年、海上自衛隊の前身、海上警備隊発足。ここには旧海軍のOBが多く関わった。それ以降、両組織は役割も違うが全く別の編成と組織で活動してきた。海保は警察庁でも防衛省でもなく国交省所属なのもうなずける。極端に言えば無線交信の周波数や海保の巡視船と海自の艦船の船名が同じだったりすることすらあった。その後不審船対応などで協力関係が必要不可欠になったが、強引な政治の進め方が現場に及ぼす影響も考えるべきだろう。(K)※敬称略