<金口木舌>平和の芽を育てる - 琉球新報(2022年9月7日)

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十数年前、広島の原爆ドームの内部に入る機会があった。爆心地から約160メートル。原爆投下で爆風や熱線を浴びて大破し、建物内にいた人々は全員即死したという

▼一歩入ると、れんがのがれきが辺り一面に散らばる。鉄のらせん階段は、ぐにゃぐにゃに折れ曲がっていた。ドーム内に何重にも張り巡らされた補強材からは、惨禍を後世に伝える覚悟と努力を感じた
▼広島、長崎への原爆投下から約1カ月後の1945年9月7日、現在の沖縄市森根で日米両軍が降伏文書に調印した。沖縄戦が公式に終結した日とされる。沖縄市は9月7日を平和に向けた一歩を踏み出した日として「沖縄市民平和の日」と定める
▼同市役所1階で9日まで「平和大使中間報告展」を開催中だ。平和大使に任命された市内の中学生らが長崎で原爆について学んだ成果を壁新聞にまとめた
▼沖縄や広島、長崎の視点を交えて戦争の恐ろしさを伝え「『戦争の文化』ではなく『平和の文化を』」など工夫した見出しも目を引く。戦跡や証言を継承し続けることで平和の芽を育てたい。