<南風>人の温かさに救われる - 琉球新報(2022年9月6日)

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息子たちを預けていた保育園は午後6時がお迎えの時間だった。ある日、6時10分過ぎに保育園から着信があり、会議を終え車に乗り込んだところで、場所は恩納村だった。保育園までは、30キロ以上の道のりだ。

「わぁ、どうしよう!」と血の気が引き途方に暮れた。思い切って電話に出ると、「お母さん、今日のお迎え、何時ごろになりますか?」と明るい声がした。おずおずと「ごめんなさい。まだ恩納村です」と伝えると、「お仕事ですか? 大変ですね。恩納村からだと時間かかりますね。私、今日遅くまで残れますので大丈夫ですよ。ゆっくり安全運転で帰ってきてくださいね。〇〇君たち、外遊び終わってシャワーとお着替え済んだので、軽食食べて室内遊びしておきますね」とのこと。「すみません、ありがとうございます」とお伝えして大急ぎで保育園に向かった。先生の優しい対応のおかげで落ち着いて運転できた。

保育園に着くと、明るい笑い声が聞こえて心底ほっとした。先生と息子たちはニコニコいつも通りに迎えてくれて、お絵描きをしたからと、描いた絵をプレゼントしてくれた。「すみません」を連発する私に先生は、「大丈夫ですよ、△△君とゆっくりお絵描きできてうれしかったし、たくさんおしゃべりもできたんですよ。2人とも楽しく過ごしてくれてありがとう」と満面の笑顔である。

うそのないまっすぐな優しさの中でわが子が育っていることをありがたく思い、心から感謝した。仕事を始めたばかりのその先生に、とても大切なことを教わり、その温かさに救われたのである。あの日の学びが、私のヒューマンサービスの「根っこ」になった。

目指す姿は、人に向き合う時、上機嫌でいること。感謝は「すみません」ではなく「ありがとう」と真っすぐに伝えることである。
(金武育子、沖縄発達支援研究センター代表)