【政界地獄耳】安倍派幹部が欲しい「御意向の御威光」- 日刊スポーツ(2022年7月15日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202207150000073.html

★元首相・安倍晋三が大きく関与したといわれたものの、官僚が守り通した加計学園疑惑。獣医学部新設をめぐって、安倍が意識的に友人の加計理事長が運営する加計学園をひいきしたのではないかとの疑惑が持たれた。ここでよく使われたのが官僚が別の官庁や官僚に使う殺し文句。「総理の御意向」。この伝家の宝刀が使えるのは実際に首相や、当時の首相秘書官、首相補佐官らが直接、または間接的に「案件を最優先で速やかに進めろ」と指示する場合に使われた。

★巨大な霞が関自民党の中はこの「総理の御意向」という御威光が極めて効果的で、カードで言うジョーカーのような絶対的存在。それを首相・岸田文雄が利用し始めた。政府は14日、安倍の葬儀を秋に「国葬」形式で実施すると発表した。首相経験者の「国葬」は1967年の首相・吉田茂以来だが、現行憲法には国葬の法的根拠はなく、吉田の「国葬」は当時の佐藤栄作内閣の閣議決定による特例として実施された。大日本帝国憲法のもとに規定された国葬令が戦前にあったころも天皇と皇族、その臣下や準ずる者に限定され首相経験者には適用されない。長期政権の功と森友、加計、桜を見る会といった罪も多い安倍への国葬は歴史的に議論を生むことになるだろう。

★それぞれの「総理の御意向」を私だけ個別に聞いていたと言い出しかねないのは、今後の行く末が複雑になるばかりの「安倍派」幹部の連中だろう。実は「後は頼む」と安倍さんから言われていたと御意向の御威光を使わないと誰も次期「清和会」会長にたどり着けない。大物がひしめいているからと思われているが、それほどの人物がいないから決まらないのだ。ここでは元首相で派閥のOBである森喜朗の「御意向」がものをいいそうである。(K)※敬称略