<南風>新しい力と心の成長 - 琉球新報(2022年4月16日)

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障がいがある息子が保育園の時、クラスの女の子が息子のお世話係をやめさせてほしいと訴えてきた。理由は「お友達と遊べないから」と言う。さっそく担任の先生にお願いして息子のお世話係を外してもらい、代わりにお手伝いをしたい子を募集した。立候補した子は、クラスで困った子と言われていた男の子だった。次の日から、彼は息子のために一生懸命お手伝いをした。お友達の困った行動には、少しずつ変化が見られた。
卒園の日、お友達の保護者から声を掛けられた。「うちの子は、いつも怒られてばかりだった。お世話係になって優しくなった」と涙でお礼の言葉をもらった。助けられたのは息子だったが、お互いの関わりを通して、それぞれの良さが引き出されていたという、思い出に残る出来事であった。
障がい児の支援をする時、できる子ができない子を助けた方が良いと考えてしまう傾向がある。「みんな同じ」「みんな一緒」がインクルーシブの良さだと考え、できる子の伸びるタイミングや先に進むチャンスを奪ってしまうことがあるのではないか。反対に、困った子には障がいのある子の支援はできないだろうと思い込み、挑戦するチャンスを与えていないかもしれない。いつもは上手にできなくても、やりたいという気持ちがあれば、力が発揮されることがある。できた成果より、やったという気持ちが、見えない成長をもたらすのではないだろうか。
障がいのある子も、ない子も、同じように気持ちが尊重されなければいけない。嫌々取り組むことで、障がい者との関わりに対しつらい経験を積む必要はないと感じる。インクルーシブ教育とは、お互いの違いを認め関わることで、困難の壁を協力し乗り越え、これまで気付かなかった能力を発見し、心が成長することではないだろうか。