(余録) 第二次大戦中、独ソ戦に加わった夫の行方を捜すイタリア人妻を… - 毎日新聞(2022年2月25日)

https://mainichi.jp/articles/20220225/ddm/001/070/105000c

第二次大戦中、独ソ戦に加わった夫の行方を捜すイタリア人妻をソフィア・ローレンさんが演じた映画「ひまわり」(1970年)。冷戦下では珍しいソ連ロケが行われた。見渡す限りのひまわり畑が印象深い。キエフ日本大使館ウクライナ南部のヘルソン州と紹介している。
約4年にわたった独ソ戦では民間人を含めて2000万人以上が犠牲になった。「互いを妥協の余地のない、滅ぼされるべき敵とみなすイデオロギー」から蛮行が繰り返され、「人類史上最大の惨戦」につながったという(大木毅(おおき・たけし)著「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」岩波新書
プーチン露大統領の両親はソ連勝利の転機となる攻防戦が続いたレニングラード(現サンクトペテルブルク)にいた。もう助からないと担架で運び出された母親を父親が見つけ、母親は九死に一生を得た。プーチン氏自身が記す家族史である。
戦後生まれのプーチン氏には戦争の悲惨さが実感できないのか。ウクライナでの軍事作戦を許可し、ロシア軍の攻撃が始まった。親露派勢力が一部を実効支配する東部地域の一方的な「独立承認」に続く国際法違反の暴挙である。
どこまで戦線を拡大するつもりなのか。プーチン氏への不信が高まる。ロシア軍がウクライナ軍と正面衝突することになれば、多くの犠牲者が出ることは避けられない。
「ひまわり」には丘陵地帯に立てられた無数の十字架の墓標が登場する。21世紀の現代にそんな愚行を繰り返してはならない。国際社会の決意も問われている。