(筆洗) 五輪の開会式や閉会式でその曲が使われるようになったのは一九… - 東京新聞(2022年2月6日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/158518
五輪の開会式や閉会式でその曲が使われるようになった

のは一九九六年のアトランタ五輪の閉会式が最初だったらしい。歌ったのは、スティービー・ワンダーさん。ジョン・レノンの「イマジン」である。
二〇〇六年のトリノ冬季五輪の開会式ではピーター・ガブリエルさんが歌った。その後、ロンドン五輪、平昌冬季五輪でも使われた。昨年の東京五輪開会式での「イマジン」は記憶に新しかろう。五輪使用曲ランキングでもあれば、この曲はかなりの上位に入るはずだ。
<想像してごらん 今を生きる、すべてのひとびとのことを>。国同士の争いや宗教による対立をなだめ、平和と穏やかな生活を願う詞の世界観は平和の祭典にふさわしいと採用されるのだろう。そして北京冬季五輪の開会式。やはり「イマジン」が流れた。
競技にかける選手の思いとは別に政治の色がどうしても消えない今大会である。中国当局による新疆ウイグル自治区での少数民族に対する人権侵害。これを理由に米国や英国などは開会式の「外交的ボイコット」に踏み切った。
逆に北京入りしたのはウクライナをめぐり米国などと対立を深めるロシアのプーチン大統領習近平国家主席と会談し、この問題でのロシア側への支持を取りつけている。
人権侵害や対立。五輪の裏側に潜むものをいやでも想像してしまう。ジョンの「イマジン」にはほど遠い。