<金口木舌>巣立ちを支える両輪 - 琉球新報(2022年2月5日)

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数年前、取材で児童養護施設や里親家庭を巣立った若者たちを訪ね、話を聞く機会があった。生活が安定している人たちに共通していたのは、信頼できる大人との出会いだった

▼施設出身の20代男性は、同級生の家族とつながりが深く、施設にいる間も休暇中は同級生宅に滞在。社会人になった後も、家族同様の関係は続いていた。同級生の父親は男性を「僕の四男と同じ。やーにんじゅー(家族)ですよ」と言う。温かい言葉が印象深かった
▼施設や里親家庭で育てられた子どもは原則18歳、最長22歳で“自立”を求められる。困窮・孤立に陥る事例が指摘されてきたが、厚生労働省がようやく改善に動いた。児童福祉法を改正し、年齢制限を撤廃することを決めた
▼社会に出るまでに施設や里親宅で準備をする「助走期間」が個々に応じて設定されるようになる。自立の後押しになる
▼制度の改善と合わせ、大切なのは社会のありようだ。地域や企業で若者たちに出会う機会があるだろう。関わる大人が多いほど、自立に向けた原動力になる。