<金口木舌>命を危険にさらさない - 琉球新報(2022年1月21日)

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台湾に出張した際、台北駅の外壁にもたれ、座り込む人が大勢いた。路上生活者のようだった。ベルギーでは路地裏に座っていた若者につばを吐きかけられた

▼ホテルの部屋で汚れたズボンを洗いながら、フォーク歌手の高田渡さんの「生活の柄」を口ずさんだ。〈陸(おか)をひいては眠れない/夜空の下では眠れない〉。詩を書いた県出身の詩人・山之口貘は生活に困窮し路上生活も経験した
台北駅の外にいた人々やベルギーの若者は、コロナ禍をどう過ごしているのだろうか。1995年の阪神大震災後には寒さや衰弱で命を落とす路上生活者もいた
▼トンガ沖の海底火山噴火で津波警報・注意報が発表された16日未明も全国で多くの人が避難した。寒い中、住居や車を持たない人々はどうしていたのだろう
▼「県生活と健康を守る会連合会」によると、年間200件ほどの相談のうち約半数が住居に関連するものだという。非常時にこそ路上の弱者にも関心を持ち、身の回りでできることを探したい。誰一人、命の危険にさらされない社会をつくるために。