【政界地獄耳】森友裁判幕引きに「国民の理解」は? - 日刊スポーツ(2021年12月17日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202112170000040.html

★14日、立憲民主党幹事長・西村智奈美は会見で「今日で沖縄の辺野古の埋め立てから3年がたつ日」としたうえで「辺野古の新基地移設については予算の面からも工期の面からも、米軍の考え方などから含めても、もう固執する理由は全くない。中止すべきと考える」とした。まさに「国民の理解が得られない、ずさんな計画」ということだろう。

★同党の2人の女性議員がそれぞれ代表を務める政治団体が昨年、コロナに関連して「両立支援等助成金」を受け取っていたことが分かった。このことで西村は「国民の理解を得られず返金する」と説明した。この助成金も違法なものでないと言いながら「国民の理解を得られない」という。実は政治家にとって、この言葉はポピュリズムを利用する禁断の言葉ではないか。政治は国民の理解を得られないことだらけだ。国民の理解を得られないまま、政府が押し通したこと、うやむやになっているもの、放置されてきた事柄はたくさんある。それぞれの事案で国民は我慢を強いられるか、泣き寝入りとなる。

★森友事件で元首相・安倍晋三夫妻の名前を削除するなど関与を隠蔽(いんぺい)するために近畿財務局勤務の赤木俊夫さんが決済文書改ざんをさせられ自殺した事件。国に真相解明を求めた民事訴訟は、国の認諾、つまりあっさり認めてしまうことで裁判が成立しなくなった。これで裁判に関係者を引っ張り出すこともできない。幕引きになる。政権が変わり「聞く耳」を持つ首相・岸田文雄の判断が官房副長官・磯崎仁彦の「赤木さんが公務に起因する心理的、肉体的負荷が原因で亡くなられたことについて、国の責任は明らかとの結論に至り、損害賠償請求を認めた」という言い方になった。このまま裁判を続ければ「国民の理解が得られない」事態が広がるからだろう。政治はこの「国民の理解を得られない」を使い分けてはいけない。すべての政治は「国民の理解を得る努力をするもの」ではないのか。(K)※敬称略