【政界地獄耳】韓国元大統領・全斗煥死去 光州事件の真実、明かされぬまま - 日刊スポーツ(2021年11月25日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202111250000066.html

★韓国政府は、23日死去した韓国元大統領・全斗煥について「国家葬」を行わないと発表した。大統領府報道官は、1980年に民主化運動を武力鎮圧した光州事件を念頭に「最後まで歴史の真実を明らかにせず、誠意ある謝罪がなかった点に遺憾を表する」と厳しい対応だ。韓国検察は23日までに追徴金2205億ウォン(今のレートで213億円)のうち1249億ウォン(57%)は納付されたが残りの956億ウォンは未納という。

★1980年5月18日から10日間続いた市民らと軍の衝突による死者・行方不明者は242人にのぼるが、軍事政権下の負の遺産として現在でもそのとげは韓国政治に刺さったままだ。80年代、米レーガン大統領、韓国・全斗煥大統領、首相・中曽根康弘は冷戦時代の環太平洋連合体だった。中曽根政権時代に最終的に40億ドルの支援を行うことになったが、日米は韓国に民主化と軍事力の両方を兼ね備えさせることが肝要という立場だった。日韓には政財界に幅広い人脈がすでに構築されていた。

★経済界では東急グループ会長・五島昇と伊藤忠商事会長・瀬島龍三(いずれも当時)の存在が大きい。瀬島は全と陸士の先輩後輩にあたる。また瀬島は中曽根のブレーンを務めていて、81年のIOCの総会で88年五輪に立候補して最有力だった候補地名古屋をつぶして準備不足が懸念されていたソウルに五輪を“誘致”させた黒幕と言われた。韓国は64年の東京のように朝鮮戦争の傷痕の復興に五輪開催が拍車をかけたが、性急な経済発展の中、光州事件が起こる。軍が武力で無防備な市民を制圧したのである。このいきさつを知る人たちはこれで皆鬼籍に入った。来年早々、韓国では大統領選挙が行われるが日韓関係は冷えたままだ。(K)※敬称略