(ぎろんの森) 政治のおかしさ正す力 - 東京新聞(2021年11月20日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/143804

衆院選が終わり、政党略称など選挙制度の問題点が噴出したかと思ったら、政治とカネの問題も明らかになりました。国会が衆参両院議員に一人当たり毎月百万円を支給している文書通信交通滞在費(文通費)です。
そもそも文通費は領収書が不要で使途公開の義務もない不透明なカネです。それが十月三十一日投開票の衆院選で当選した在職一日の新人や元職の議員にも、十月分が満額支払われていたのです。
これには批判が噴き出し、読者の皆さんからも東京新聞に「全くふざけた話」「こんなこと認めてはダメだ」「納得がいかない」などと怒りの声が届いています。
世論の反発に驚いたのか、各政党は支給された議員から寄付させたり、日割り支給を可能にする法案提出を検討していますが、日割りにしただけでは不透明さは残ります。
本紙は十八日付社説で「国会は一括支給をやめて実費精算とし、使途報告、領収書提出を義務付ける法改正を検討すべきである」と訴えることにしました。要は一般の企業並みにすればいいのです。
ある読者からは「今までマスコミは何とも思わなかったのか」との厳しい声もいただきました。
言い訳がましいのですが、本紙はこれまでも社説で「政治家には歳費のほかに、政党交付金や文通費などが入る。もちろん国民の税金だ。文通費は議員一人あたり年間千二百万円が支給されるが、領収書が不要で、使途公開の義務もない。これには納得できない」(二〇一四年十二月一日)などと訴えてきました。
しかし、国会議員側の動きは鈍く、問題は放置されてきたのが実情です。私たちの力不足を感じざるを得ません。
今回、各党が対応せざるを得なくなったのは、世論の反発が強かったからにほかなりません。覚醒した民意こそが政治を変える力になると、あらためて教えられました。
政治にはおかしいことがまだまだあります。私たち論説室は読者の皆さんとともに、おかしいことにはおかしいと声を上げ続けたいと考えています。 (と)