<金口木舌>つながらない権利 - 琉球新報(2021年10月24日)

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記者の基本として言われたことの一つが「いつでも電話に出ること」。事件・事故の連絡は時間に関係なく入る。寝るときも枕元に携帯を置いて仕事とつながれるようにした

▼日本人の勤勉さ故か、常に業務対応をしようとの考えは強いようだ。NTTデータ経営研究所などの調査では、勤務時間外の緊急性のない連絡に「対応したい」「対応するのはやむを得ない」と思う人は6割を超えた
▼メールやSNSなど最近は通信手段が多様化する。在宅勤務やリモートの業務も普及し、仕事とプライベートの境界は曖昧になりつつある。そんな中で「つながらない権利」が注目される
▼勤務時間外は会社からの連絡を拒否できるという考え方で、フランスでは一定規模以上の企業にこの権利の導入を求めている。日本では、仕事の電話やメールを断絶する「山ごもり休暇制度」を取り入れた企業がある
働き方改革が推奨され、ワークライフバランスの重要性も広く認識される。一方で勤務時間外に緊急以外の連絡を避けるという意識は浸透せず、法制化となるとハードルは高い
▼仕事も私生活も大事にすることで、社員の健康づくりや持続可能な働き方を確立できる。時間外や休日の連絡が本当に必要かどうか、立ち止まって考える。企業や社員一人一人が意識を変えれば、つながらない権利はもっと広がるはずだ。