<傍聴記>多様性へ「大切な一歩」:東京 - 東京新聞(2021年10月7日)

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「私のような聴覚障害者も議会活動がスムーズに行えるよう、皆さまにご理解いただいた。心から感謝申し上げます」。七月の都議選で初当選した立憲民主党斉藤里恵さん(37)=写真=が六日、初めて都議会の一般質問に登壇し、こう謝辞で締めくくった。
筆談ホステス」として知られた斉藤さんは、耳が聞こえないため流暢(りゅうちょう)な発話が難しい。この日は壇上にパソコンを持参し、文章を合成音声で読み上げるソフトを活用。障害者施策の充実などを訴えた。
普段はやじも飛び交うが、この時ばかりは静かに見守る議場の面々。本人と何度もリハーサルを繰り返した議会局職員は「事前説明ではどの会派にも好意的に受け止めてもらい、多様性への理解の深まりを感じた」。
議会終了後、斉藤さんは取材に「障害当事者だからこそ分かることがあり、つくれる政策がある。私だけではなく、これから後に続く人にとっても大切な一歩になりました」と、ゆっくりと言葉を重ねた。
マイノリティーが取り残されることなく、活躍することもできる社会。それが特別ではなく、ありふれた日常になっていく−。そんなきっかけになることを願いたい。(小倉貞俊記者)