<曇りのち晴れ>先生の涙 - 東京新聞(2021年9月30日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/133920

「今日、学校で先生が泣いた」。米国で暮らしていたとき、小4だった次女が言った。中米エルサルバドル出身の友だちが一家で国境を越えた経験を話し、先生が「どうやって(西部から東部の)この町まで来たの?」と尋ねた。彼女が「歩いて」と答えた瞬間、大粒の涙をこぼしたという。
渡米したばかりで幼かった次女は移民政策を知らず先生の涙の意味も分からなかった。でもその2年後にトランプ氏が大統領になったときは、姉の高校の先生がショックで学校を休んだり、妹の同級生で移民の子たちが「強制送還されるかも」とおびえたりしているのを見て、政治の影響を実感したらしい。
日本でも、このコロナ禍では国や自治体の施策が子どもの暮らしに直結している。わが家のある自治体は高齢者の次に12〜18歳にワクチン接種が回ってきて、次女も夏休み中に済ませることができたが、順番の関係で打てていない同級生もいる。
本人に選挙権が与えられるまで数年あるが、今秋の衆院選ではニュースをよく見て、自分で選べるようになってほしい。 (原尚子、48歳)
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厚い曇り空でも雲の向こうには必ず青空がある−
そんな思いを胸に、記者が暮らしの出来事を綴(つづ)ります。