河北春秋(9/29):フランス映画の傑作『天井桟敷の人々』は日… - 河北新報オンラインニュース(2021年9月29日)

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フランス映画の傑作『天井桟敷の人々』は日本でも人気だ。理由の一つは秘田余四郎による簡潔で明快な字幕にあるようだ。例えば悪漢ラスネールのせりふに「俺をからかってるのか。虚栄心があれば傷つくが、俺には虚栄心はない」
原文を直訳するとこうなる。「君は俺の言うことをまじめに取らないね…もし俺が見え坊だったら君には骨の髄まで傷つけられることになるだろう、だが…」などと、もっと続く。短い字数の字幕には収まらないし、意味も捉えにくい。
文化庁の国語世論調査を見て古典的名画の字幕を思い出した。新型コロナ関連の用語で「そのまま使うのがいい」と答えた人は「ステイホーム」61%、「ソーシャルディスタンス」56%、「ウィズコロナ」29%。瞬時に理解するのが少し難しい言葉ばかり。
「ビジネス・アズ・ユージュアルの場合」「感染者の爆発的な増加いわゆるオーバーシュート」「都市が封鎖されているいわゆるロックダウン」。東京都のサイトに載る小池百合子知事の会見記から引用したが、はて、
きょうは自民党総裁選の投開票日。討論会で候補者が語った政策は割と理解しやすく思えた。政治には言葉が大切。誰が総裁になっても、名画の字幕のように、分かりやすく、心に届く言葉を。そして政治を。(2021・9・29)