<金口木舌>孤立を防ぐために - 琉球新報(2021年9月25日)

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地域のつながりが弱くなっているといわれる中、民生委員児童委員は欠かせない存在だ。ボランティアで地域の困り事を聞き取り、行政や支援機関につなげる。活動を紹介しようと民生委員に同行し、地域の世帯を訪ねたことがある

▼介護疲れや困窮、引きこもりなどさまざまな課題が見えてきた。公的福祉サービスや民間の支援を利用している世帯はまだいい。「孤立している家庭が心配」という民生委員の言葉が印象に残った
糸満市内の自宅で父親の遺体を約2年放置したとして、長男が再逮捕された。別件で糸満署に逮捕されていた。長男は「(父は)寝たきりで気付いたら亡くなっていた。現実から逃げてしまった」と容疑を認めている
▼過去に本島北部で高齢男性が妻を殺害した事件もあった。男性は妻を介護しており、妻に頼まれて絞殺したとして嘱託殺人の罪に問われた。動機は憶測で語れない。ただ、孤立や介護に疲弊していたという共通点がうかがえる
▼身内の介護が始まると、家族の間の役割分担、介護費用の工面、仕事との両立など課題は山ほどある。ケアしたい気持ちと介護負担の間で苦しむ人は少なくない
▼問題を抱え込み孤立している人は身近にいる。介護する側もされる側も健やかに過ごすためにどのような制度や支援が望ましいのか。高齢化が進む中で、事件は重い課題を突き付けている。