【政界地獄耳】次期自民党総裁に求められるのは安倍・菅政治終焉の実現 - 日刊スポーツ(2021年9月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202109040000076.html

★「ワクチンさえ打てれば」「オリンピックさえできれば」「改造人事さえできれば」。首相・菅義偉はその都度支持率のV字回復を夢見たことだろう。首相は「新型コロナ対策に専念したい、そういう思いで総裁選に出馬しないと決めた」と辞任を表明すると皮肉にも日経平均株価は3日午後、前日終値に比べ上げ幅を600円超に拡大し、2万9149円65銭まで上昇。まさに辞任表明がV字回復をもたらした。しかし政権はこれで前首相・安倍晋三に続いて2度目の政権放り投げで、コロナ禍は2つの内閣を倒したことになる。

菅内閣の成果は何か。携帯電話値下げ、デジタル庁発足が目玉で、ワクチン接種1日100万人達成を成果とするメディアもある。就任早々の学術会議人事介入問題から強権を振るうも論理的に説明ができず、この1年、国会でも迷答弁が続いた。外交安全保障、とりわけ対中政策には一切触れず、日米関係もバイデン政権の信頼を得られたとは思えない。政権終盤にはアフガニスタン邦人救出作戦の失敗など、危機管理が得意とのことだったが、人脈、発想、想像力では歴代内閣から見ても誇れるものはなかった。

★人事の菅と豪語していたが、人を見る目のなさとイエスマンだけ近くに置いた結果、その人事でつまずいた。だが、最後まで政権運営に自信を持っていたはずだ。しゃべりやパフォーマンスなどは全く下手だが、首相は人事権、公認権、解散権を持っている。どの議員が何を言おうが無敵だったはずだ。ところが党内世論の風に興味を示さず、8月25日の緊急事態宣言延長会見では国民に向けて「あかりははっきりと見え始めている」と国民や党内の空気とのずれを決定づけた。

★今後は俺も私もと、次から次へと出馬報道が続くだろうが次期自民党総裁には何が求められているか。安倍・菅政治の清算と終焉(しゅうえん)を名実ともに実現できるかが問われるのではないか。政治と公務員の私物化や新自由主義路線の修正が、政策にも経済対策にも反映され、安倍・菅政治との差別化が図れる人材かどうかはその後の総選挙の結果にも大きく影響するだろう。傷んで修正不可能かもしれない政治の劣化をスピーディーに決裁し処理する行動力が問われるはずだ。加えていつか実現すべき夢のようなぼんやりした政策ではなく、今すぐ実行でき、即政策変更可能な科学的見地に沿ったコロナ対策のプランと実行力を持ち合わせているかだろう。菅辞任は総裁選挙を盛り上げ総選挙での自民党の劣勢を挽回するチャンスでもある。水面下の政治的思惑を捨てれば自民党は復活する。(K)※敬称略