<金口木舌>対等な関係 - 琉球新報(2021年9月3日)

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騒ぐばかりの子どもたち。席を立ったりふざけ合ったりして、教師の話に耳を傾けようとしない。北極圏にあるデンマークグリーンランド東部の村を舞台にした映画「北の果ての小さな村で」の一場面だ

デンマーク本土から赴任した教師のアンダースは「子どもたちの将来のため」とデンマーク語を教える。子どもたちは興味を示さず、家族と漁に出て1週間欠席する子どももいた。地元の女性は「村の暮らしを理解しようとしていない」と批判する
▼アンダースは子どもたちに村の暮らしを聞き、政府から「必要ない」と言われていたグリーンランド語も学ぶ。犬ぞりの乗り方を教わり、仲間と漁に出掛けた
内閣府は来年度の沖縄関係予算概算要求を2998億円と決めた。沖縄の施政権返還から来年で50年。他の都道府県と違い、国のさじ加減で要求額が増減する一括計上方式が続く
自民党沖縄振興調査会の提言案は、沖縄の発展は「我が国全体の安全保障環境の安定を意味する」と位置づける。辺野古新基地建設、先島諸島への自衛隊配備が進む。沖縄振興は安全保障の負担と引き換えなのか
▼冒頭の映画で子どもたちが教師の話に耳を傾けたのは、地元の漁師を授業に招いてからだ。押しつけをやめたことで立場を超えて理解を深めた。国と地方がともに発展するためにも対等な関係性が不可欠なはずだ。