【政界地獄耳】複雑制度にメス入れないと国民も医療関係者も救えない - 日刊スポーツ(2021年8月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202108260000041.html

★23日、厚労省と東京都は今年2月に成立した改正感染症法16条の2に基づき都内約650の病院、約1万3500の診療所、医師や看護師らの養成機関に対して病床確保や人材派遣を要請することで合意した。要請に対して正当な理由がないにもかかわらず応じなければ勧告し、さらに従わなければ医療機関名を公表する、と厳しい。都知事小池百合子は「デルタ株の猛威に総力戦で臨む必要がある。急を要しない入院や手術の延期など、通常医療の制限なども視野に入れている」とまで言い出した。

★無論、この手の要請は必要だと思う。だが既に新型コロナ患者の治療を受け入れている医療機関へのさらなる協力は限界値を超えているし、眼科など畑違いの医療機関などにも一律に要請することで生まれる二次被害、つまり別の受けられるべき医療が圧迫される問題もはらむ。既に受け入れている多くの医療機関は応じられない正当な理由になるのではないか。一部議員や医療関係者の言う日本型ロックダウンなどの運用、または法制化は緊急事態宣言と同じで効果があいまいで出口が見えない。結局、発令と解除を繰り返すことでは同じになる。

★ところが首相のブレーンであるパソナグループ会長・竹中平蔵は「病床を増やせというと医療関係者は『出来ない』理由を並べたてる」「『医療ムラ』を解体しないと、日本は良くならない」と矛先を医療機関に転じている。一方、東京都が拒んできた体育館などに病床を設置する“野戦病院”(臨時病床)が検討段階に入った。すると戦時下のようで戦時病院は言葉が悪いと難癖もつく。今は緊急事態なのではないのか。なぜ医療崩壊が起きるのか。病院はあるが、医者の数が見合わぬまま日本病院会全日本病院協会日本医療法人協会などの団体が診療報酬制度という複雑な制度の上にギリギリで乗っかっている状態だからだろう。コロナ禍から1年半、政治がこの仕組みにメスを入れないことには国民も医療関係者も救えない。(K)※敬称略