<金口木舌>平和な時代の泣き声 - 琉球新報(2021年8月15日)

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俳優の反町隆史さんが歌う「POISON」は赤ちゃんが泣きやむ曲として知られる。あらゆる手を尽くしてもぐずりが収まらないとき、この曲を流すと不思議と落ち着く

▼言葉を話せない赤ちゃんは泣くことで意思を示す。空腹や体の不調など命に関わる事象を訴えるときもある。そのため、泣き声には大人の注意を引きつける音域が含まれるという
▼泣いている理由が分からず困惑する親も多いはず。人見知りなど月齢を重ねるごとに原因も増える。人工知能を活用し、泣き声から赤ちゃんの状況を解析するアプリもできた
オリックス生命は「#泣くのが仕事」プロジェクトを進める。公共の場で赤ちゃんがぐずり、肩身の狭い思いをする保護者に「大丈夫、子どもは泣くのが仕事です」と伝える活動だ。親子を包み込むような社会の温かさを感じる
▼戦時中、赤ちゃんは大声で泣くことを許されなかった。空襲時には米軍機に泣き声が届くと言われたという。沖縄戦では、壕の中で泣きやまない乳児を殺せと命じることもあった
▼今年の平和の詩を読んだ上原美春さんは「(赤ちゃんが)大きな声で泣ける今や、それを笑顔であやすことができる今は当たり前じゃない」と語った。きょうで終戦から76年。沖縄では基地建設が進み、米軍機が空を飛び交う。心の底から平和を感じられる日が早く訪れてほしいと願う。