<金口木舌>政治家の空虚な言葉 - 琉球新報(2021年8月13日)

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広島市長崎市で開かれた平和式典での菅義偉首相の不手際に批判の声が上がった。広島ではあいさつの一部を読み飛ばし、長崎では式典に1分遅刻した。褒められた話ではない

▼読み飛ばしは、原稿の一部がめくれない状態になっていたために起きたもので「事務方のミス」という。問題の本質はここではあるまい。結局は「心ここにあらず」ということではないか
▼読んでいたとしても心には響くまい。読み落としたのは「『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要」など。信念ならば、政府は既に核兵器禁止条約に署名していよう。言葉が空虚なのだ
▼長崎、広島の苦悩と祈りを政府は受け止めているのか。菅首相が両市で読み上げたほぼ同内容のあいさつと、両市長による平和宣言との落差を見ても、政府の本気度が低いことは明らかだ
▼「私たちは、犠牲になられた方々を決して忘れてはいけないのです/私たちは、悲惨な過去をくり返してはいけないのです」。広島の式典で2人の小学生が発した「平和への誓い」に、この国が立ち返るべき場所が示されている
▼コロナ禍の中で思う。実行力の伴わない政治家の言葉は軽く、むなしい。前知事の翁長雄志さんはそのことを強く意識したであろう。県民の心を震わせた言葉を遺した政治家が逝って3年。いくつかの言葉を思い出す。