【政界地獄耳】五輪の裏では総裁選めぐる駆け引き - 日刊スポーツ(2021年7月29日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202107290000097.html

東京五輪の最中、永田町の自民党幹部たちは五輪後の動きで主導権をとるためにうごめき始めた。27日、首相・菅義偉は五輪中止の選択肢はないかの問いに「人流も減っていますし、そこはありません」「重症化リスクを7割減らす新たな治療薬を政府で確保しており、これから徹底して使用していく」と7月に薬事承認された「抗体カクテル療法」に期待を寄せた。また首相は26日発行の月刊誌で、衆院選の獲得目標について「私は欲張りだから、とだけ申しておく」と述べ自らが指揮して選挙に臨むことが既成事実化することを加速させる発言をしている。

★すると同日、水戸で開かれた自民、公明両党合同の集会で公明党幹事長・石井啓一は同日の東京都のコロナウイルス感染者数が過去最多の2848人に上ったことについて「(潜伏期間を含めて)2週間前の状態が反映しているわけであり、東京オリンピックが開会したからこうなったわけでは決してない」と首相を擁護した。しかしながら28日には東京の感染者は3000人を超え、首相が頼るワクチンも停滞気味。コロナの手詰まり感は否めないどころか、世界中から国民の命の安全より五輪強硬かと思われても仕方がない状態だ。

★一方、原爆投下直後に降った「黒い雨」による健康被害をめぐる訴訟で、法務、厚生労働両省の「上告やむなし」の声を押し切り首相は上告断念を表明した。背景には広島での選挙が「09年の政権交代の時ぐらいアゲンスト」と自民、公明両党が悲鳴を上げているからだとの解説が政界では定着している。つまり首相の再選戦略は思惑通りには運んでいない。自民党は来週にも総裁選挙管理委員会を発足させるが、総裁選を衆院選後にして無投票再選を果たしたい首相に対して総裁選挙前倒し論が高まりつつある。五輪での選手活躍の裏では、激しい駆け引きが続く。(K)※敬称略