<金口木舌>弱者を傷付けない社会に - 琉球新報(2021年7月23日)

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「人に優しくしてほしい」「相談に乗ってくれる人を探して」。障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例(県障がい者権利条例)制定に向けた会議で2011年、沖縄高等特別支援学校の卒業生2人が語った

▼2人は小中学校で暴力を受け、金銭せびりなどの被害に遭った。田中寛県手をつなぐ育成会理事長は「学校や職場、社会での理解と支援が大切だ」と強調していた
▼ミュージシャンの小山田圭吾さんが東京五輪パラリンピック開会式の楽曲制作担当を辞任した。1990年代に雑誌で、学生時代に障がいのある同級生らをいじめたことを告白していた
▼行為が事実であれば暴行罪などに当たる。障がい者虐待防止法は身体的虐待、心理的虐待などを禁じている。問題発覚後に留任の方針を示していた五輪組織委の感覚は理解できない
▼武勇伝のように語る記事は被害者をさらに傷つけただろう。掲載した雑誌社も謝罪した。小山田さんや雑誌社が今後、障がいのある人々にどのように関わっていくのか注視したい。同時に私たちが生活の場でできることもある
▼県条例は「障がい者基本的人権を有する個人として、尊厳にふさわしい生活が保障される権利がある」と定める。誰もがこれまでの言動を見直し、これからを考えたい。障がい者や社会的弱者を傷つけることのない社会をつくるために。