(余録) 今年は「ロボット」の言葉を生んだチェコの作家カレル・チャペック… - 毎日新聞(2021年6月27日)

https://mainichi.jp/articles/20210627/ddm/001/070/090000c

今年は「ロボット」の言葉を生んだチェコの作家カレル・チャペックの戯曲がプラハで初演されてから100年。戯曲ではロボットが反乱を起こしたが、SFの巨匠、アイザック・アシモフは制御可能な存在にする「ロボット工学3原則」を提唱した。
鉄腕アトムの世界にも「ロボット法」が登場する。どちらもロボットが人間を傷つけることを禁じた。人工知能(AI)で自律的に動くロボットが誕生すれば、倫理や規制が不可欠と考えたのだろう。しかし、AIや自律型ロボットが実用化され始めた現実世界の議論は進んでいない。
国連安全保障理事会の報告書が、リビアの紛争で「自律型致死兵器システム」(LAWS)と呼ばれる殺人ロボット兵器が初めて使われた疑いを指摘した。「カミカゼ・ドローン」とも呼ばれるAI搭載の自爆型ドローンを指している。
アゼルバイジャンアルメニアの係争地ナゴルノカラバフを巡る紛争でもAI搭載のドローンが大量に使われたという。人間が最終的な攻撃の判断をしているのかが不透明な兵器だ。
殺人ロボットの規制を求める声は高まっている。多くの科学者や技術者が開発に協力しないと表明し、国連でも議論が始まっている。だが、米露をはじめ、反対する国も少なくない。
アトムやドラえもんを生んだ日本はロボットに親しみを感じる人が多いといわれる。人型ロボットの開発にも熱心だ。ロボットと共存する未来を望むなら、規制論議を積極的にリードする役割を果たしてはどうか。