【政界地獄耳】計算された宮内庁会見…木っ端役人などいない - 日刊スポーツ(2021年6月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202106260000143.html

★官僚に木っ端役人という時、それは下っ端の実権のない役人という意味だけでなく、上司にペコペコし国民に横柄で、全体を俯瞰(ふかん)で見ることができない役人という意味も含まれる。ただ、そんな言葉を使う人はなかなかいないと思ったら、07年、当時の都知事石原慎太郎が五輪招致組織の名誉総裁として当時の皇太子ご夫妻(現在の天皇、皇后両陛下)に就任を要請する意向を明らかにし、会見でコペンハーゲンで開催されるIOC総会で「招致の『旗頭』として活動してもらいたい」と発言した。

★これに宮内庁東宮大夫野村一成が「招致活動には政治的な要素が強いこともあるし、すでに決まった式典に出席されるのとは違う話」「招致活動の段階から関わることは難しい」と応じたところ「宮内庁ごときが決めることじゃない。国家の問題なんだから。木っ端役人がこんな大事な問題、宮内庁の見解で決めるんじゃない」と激高した。絵にかいたような「木っ端役人」の使い方だ。

★その教訓からか、24日の宮内庁長官・西村泰彦の会見では極めて計算されたやり取りが準備された。長官は「天皇陛下がオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないかご懸念されている」と発言。続く記者とのやり取りを再掲すれば(質問)「陛下が五輪が感染拡大のきっかけになるのを懸念されているというのは長官の拝察ということか」(長官)「拝察です。日々陛下とお接しする中で私が肌感覚として受け止めているということです」(質問)「仮に拝察でも長官の発言としてオンだから、報道されれば影響あると思うが、発信していいのか」(長官)「はい。オンだと認識しています。私はそう拝察し、感染防止のための対策を関係機関が徹底してもらいたいとセットで」(長官)「私の受けとりかたですから。陛下はそうお考えではないかと、私は思っています。ただ陛下から直接そういうお言葉を聞いたことはありません。そこは誤解ないようにお願いします」。木っ端役人などいない。(K)※敬称略