(筆洗) ニューディール政策で名高いルーズベルト米大統領には就任前、… - 東京新聞(2021年6月5日)

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ニューディール政策で名高いルーズベルト米大統領には就任前、軽量政治家の印象があったそうだ。米メディアによると、俳優出身のレーガン氏も「カンニングペーパーなしにはしゃべれない人物」とみられた。新自由主義的なレーガノミクスを進める大統領となる。「前評判と違う」と人々を驚かせた大統領たちである。
現在のバイデン氏も大統領選では「トランプ氏の対抗馬」の印象が強かった人であろう。七十代後半の年齢もあり、過渡期の人ともみられていたはずだ。「ねぼけたやつ」を意味した、トランプ氏による「スリーピー・ジョー」の揶揄(やゆ)は、痛いところを突いたようにも感じたものだ。
それがどうだろう。異例の規模の歳出拡大を盛り込む予算教書を発表した。レーガン氏にさかのぼる「小さな政府」から、「大きな政府」へ米国の大転換を意味している。前評判の印象とは少々異なる大きな手を打っている。
「トリクルダウンが機能したことはない」とも断言する。富める者が豊かになれば、貧しい者にも恩恵があるとする理論の否定だ。
新自由主義的な政策の下で拡大し、固定化している格差を根本から是正しようとする決意の表れだろう。
大きな政府の弊害も指摘されている。議会の抵抗も考えられる中で、かじ取りは続く。わが国からも、米国が目指す方向の変化を、驚きつつみることになりそうである。