<金口木舌>トイレと多様性 - 琉球新報(2021年6月4日)

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2017年、東京都渋谷区で開店した大手ディスカウント店に設置されたトイレがニュースになった。車いす対応の多目的トイレと別に「オールジェンダー」の案内板を掲げた個室トイレだった。性的少数者(LGBT)のためだ

▼渋谷区は同性カップルを夫婦と同等のパートナーと認める証明書を交付している。18年には全国的に珍しい「トイレ環境整備基本方針」も策定。多様性への理解を深める重要性を強調する
▼戸籍上は男性だが性同一性障害で女性として働く経済産業省の職員が、職場の女性用トイレの自由な使用などを求めた訴訟で、東京高裁は職員の逆転敗訴を言い渡した。「トイレの使用制限が経産省の裁量を超えるとは言えない」とした
▼LGBTの権利は守らねばならない。一方で女性専用スペースは性暴力から女性を守るシェルターの機能も持つ。弱者の権利をてんびんにかける必要があるのか
▼オールジェンダートイレは国際基督教大学も昨年9月に導入した。インターネットニュース「バズフィードジャパン」によると、学生対象の調査で導入前は否定的な意見が多かった。だが昨年11月には「満足」などを含め9割が肯定的な意見になった
▼誰にも痛みを強いることのない多様なトイレの形を模索する必要がある。LGBTや女性だけでなく、男性も主体的に動けば実現できることは多い。