<記者だより>遺骨が眠る島で:神奈川 - 東京新聞(2021年6月2日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/108091

初めて沖縄を訪れたのは川崎支局の駆け出し記者だった一九九六年の夏。前年に米兵三人による少女暴行事件があり、日米地位協定の見直しを問う全国初の県民投票の取材のためだった。自分の無知に立ちすくみ、未熟な記事しか書けなかった思い出は苦い。
約九割が基地の整理・縮小を求めた結果にも、基地の集中は変わらない。その後も「基地NO」の民意を無視され続けた徒労感を思うと胸が詰まる。
今、沖縄戦の犠牲者たちの遺骨が眠る沖縄本島南部の土砂を、米軍基地建設のため海に投入する計画が浮上している。軟弱地盤が発覚し、工費が膨らみ続けている無謀な計画を自ら止められないあげくの「作戦」は、特攻で若者の命を海に投じた戦争末期のようだ。
どこまでも続く沖縄の曇天。でも、立ち向かう若者たちもいる。今年三月、全国の十〜二十代約六十人が連名で、国の埋め立て計画に反対する緊急声明を発表し「一緒に考える仲間になって」と呼び掛けている。古今の若者たちに恥じない国でありたい。(中山洋子)