<南風>子は親を選べない - 琉球新報(2021年6月1日)

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親、きょうだいからも名前を呼ばれることがほとんどない子どもがいるという。「お前、えー、やー」としか呼ばれない。子どもの数が多く生存競争が激しくて家庭内でいじめのような状態になっていることもあるそうだ。名前を呼ばれ大切に扱われることに慣れていなくて、名前を呼ぶとそれだけで抵抗感を示す子がいるという。
ランチサポートの1年間の活動の総括として、物資を提供してくださっている企業の方々や子ども支援活動のみなさんを招いたシンポジウムを開催した。その際に児童センターで子ども食堂を運営されている方からお伺いした話だ。
沖縄の「子どもの貧困」は知られているが、経済的問題だけではない子どもの厳しい状況があるのも事実だ。ネグレクト、子どもの世話をしない種類の虐待だ。ただ、親もそうやって育てられた方が多く、悪意があるのではなく「こういうもの」と思っているケースも多いそうだ。
最近はヤングケアラー、家族の介護や身の回りの世話を担う18歳未満の子どもの存在に注目が集まるようになった。全国的には親が病気や障害というケースが取り上げられているが、沖縄では小学校中学年くらいから小さなきょうだいの世話をしている子どもたちが少なくない。
妹弟の保育園や幼稚園の準備や炊事洗濯などを姉兄が行い時間を取られてしまう結果、学校へ行く余力が残らず休みがちになる。授業に追いつけなくなり学校へ行けなくなってしまう。中学をなんとか卒業して進学も就職もしないまま、社会に放り出されることに。
高校進学率が97%を超える中、社会と公的な接点がない中卒進路未決定者の将来は厳しく、またその割合は全国で沖縄が一番高い。誰もが子どもらしい生活を送れるよう公的支援がもっと必要だ。
(富田杏理、おとなワンサード代表)