<金口木舌>外国籍選手のお辞儀 - 琉球新報(2021年5月23日)

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17日に行われたプロバスケットボール琉球ゴールデンキングスの試合。キングスの勝利が確定的になった終了間際、ベンチに下がる相手チームの外国籍選手が客席に深くお辞儀をした

▼試合の疲れや勝利をつかめない悔しさはあったはず。そんな中、全ての観客に感謝と敬意を示した。「私にとって日本は第二の母国だから」と理由を語る
ジンバブエ出身のその選手に対して以前、アフリカ系の蔑称を意味する言葉がネット上に書き込まれた。多くの人がすぐに差別行為を批判し、選手にエールを送り孤立させなかった
▼17日の試合前には、キングスの外国籍選手を中傷する発言も明らかになった。キングスのファンは「みんなの愛を伝えよう」と呼び掛け、選手を励ますメッセージがSNSで多く発信された
▼スポーツの世界では、ひいきのチームを応援するあまり相手をさげすむような言動をよく見掛ける。差別的な発言も少なくない。スポーツにとどまらず、ねじ曲がった愛国心を掲げ外国人を差別するヘイトスピーチ(憎悪表現)は、県内でも確認された
▼人種差別問題の解決は容易ではない。それでも差別を見逃さず、声を上げることで、全ての人が暮らしやすい社会に近づくはずだ。外国人に「第二の母国」と言ってもらえる国になっているか。深くお辞儀をする選手の姿が、私たちに問い掛けた気がする。