(筆洗) こんな子どもたちを例として挙げていた。病気の親に代わって、… - 東京新聞(2021年5月5日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/102402

こんな子どもたちを例として挙げていた。病気の親に代わって、料理、洗濯、掃除など家事をしている。幼いきょうだいの面倒を見ている。働いて家計を助けている。病気の家族の身の回りの世話をしている…。
美談にも聞こえるか。けなげでたくましい子どもを思い浮かべる人もいるだろう。けれどもこの子たちのことを心配しなければなるまい。厚労省が示している「ヤングケアラー」の実例である。
親の病気などが原因で大人が担うべき家事や家族の世話を日常的に行っている子どもたちのことである。調査によると、「家族の世話をしている」と答えた中学生は全体の5・7%、高校生は4・1%。おおむねクラスに一人か二人いる計算と聞けば少なくないと感じられるだろう。
親には手を合わせたくなるほどありがたい子どもたちだろう。だが、家族を思うあまり、遅刻や欠席を重ね、学業や進路にも影響が出やすい。勉強や部活どころではなくなり、学校で孤立する危険もある。なにより、子どもらしい時間が消える。
表面化しにくいことも問題という。子どもたちは家族の世話を当然と考え、相談もあまりしないと聞く。
「ヤングケアラー」をケアするのは社会しかない。相談はもちろん、家族ごと支援する方法を考えたい。「美談」に頼ってはなるまい。こどもの日である。どの子にも子どもらしい一日があることを。