【政界地獄耳】決断できない菅政権 コロナ対策は五輪対策でしかない - 日刊スポーツ(2021年4月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202104260000088.html

★4都府県に3度目の緊急事態宣言が出されたが、国民はこの宣言が科学的根拠というよりも政治的思惑で出されたことだと理解していることだろう。14日の参院本会議で「現時点で全国的な大きなうねりとまではなっていない」と見えを張った首相・菅義偉は週末をワシントンで日米首脳会談に充てた。米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は「4月上旬から10都府県に対し、まん延防止等重点措置を適用したものの効果が出ず、緩い制限は感染拡大を抑止することに失敗した」と指摘した。

★コロナ対策はオリンピック(五輪)対策でしかなく、国民の生命や財産よりも五輪開催という体裁が優先されることに政権内の議論があったとは思えない。米AP通信は「菅はこれ以上経済にダメージを与えることに消極的」と書かれ、誠に的を射ていると思うが、さすがに昨年末あたりから経済とコロナ対策の両輪などというアクセルとブレーキを同時に踏むような政策を“コロナ担当”の経済再生担当相・西村康稔も言わなくなった。五輪に対しては国民の中に1964年の東京五輪の思い入れが強くあり、関係するアスリート世代よりも、親や指導者に五輪への憧憬(しょうけい)が強い。

★ところが菅政権は明確なメリハリと決断ができず、五輪開催こそが成功だと考える。また政府内には国民の7割以上が常に五輪開催に反対しているものの、いざ東京で始まれば反対していた人たち誰もがテレビで競技にくぎ付けになり、メダルラッシュに沸けば誰も「反対」などと言わなくなると思っている。だが参加者の少ない五輪のメダルでは国内アスリートたちも複雑だろう。それは国民にもすぐ伝わる。25日に行われた衆参の補選と再選挙は軒並み投票率が下がっている。コロナ禍の総選挙にも課題を残す。23日、国際オリンピック委員会IOC)のへーリー・ウィッケンハイザー委員(カナダ)は開催の判断は「医療と健康の専門家によってなされるべきで、企業や大規模なビジネスによってなされるものではない。明確で透明性のある説明が必要」と当然の指摘をしている。(K)※敬称略