<金口木舌>それぞれのペースで - 琉球新報(2021年3月24日)

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「気をつけ、前にならえ。全体前に進め」―。両手両足をそろえ、隣の人と歩調を合わせて行進する。運動会でよく見られる光景だ。子どもたちが整列する姿をこれまで無頓着に眺めていた

日本ラグビーフットボール協会理事の谷口真由美さんは、運動会の整列を「明治時代の修練の名残で、軍隊の文化が今も体育に残っている」と指摘する。規律を重んじる教育は、学校内に行き過ぎた校則として残る
▼肌着の色は白と規定されている娘の中学校は、制服検査でブラウスのボタンを開けて肌着の色をチェックされるという。人権よりも、優先される校則とは何か、考えさせられる
▼以前に比べ、かなり校則は変わってはきている。県内でも1990年代に中学男子の丸刈りは廃止され、ここ数年は男女の区別なく制服が選べる制服選択制も広がりを見せる
▼髪の色が明るい人に地毛証明書を求めるといった、度を越える校則の見直しの議論は以前からある。多くの人が「おかしい」と思いながら残り続ける背景には、髪質は一部の生徒の問題とされ、制服検査は一時的な我慢で見過ごされてきたからだろう
グローバル化が進み、多様な価値観が尊重される世の中だ。規律重視によって一つの形にはめ込む教育では、創造性や自立した考えを育めない。一斉に「全体前に進め」ではなく、それぞれのペースで進む方がいい。