(筆洗) 祖父が莫大(ばくだい)な遺産を残してくれたのだが、すべて受… - 東京新聞(2021年3月24日)

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祖父が莫大(ばくだい)な遺産を残してくれたのだが、すべて受け取るには条件がある。今のお金で約二十五億円を一年の間に使い果たすこと。一九〇二年の米国小説「ブリュスターズ・ミリオンズ」。何度も映画化されているのは設定の面白さのおかげだろう。
一年で二十五億円を使うのは簡単なようだが、さらに条件がある。不動産や株など資産を残してはならぬ。寄付やギャンブルに使えるのは5%だけ。使用人らに支払えるのは正当な報酬額のみ。うーんとなるだろう。困った主人公は負けるために市長選に出馬するが…という筋書きである。
同情する気はないが、この人もやはり使わねばならぬ大金を背負わされていたのではないか。元法相の河井克行被告。参院選で妻の案里前参院議員を当選させるため、買収目的で地元議員に金を配ったことを一転して認めた。
議員辞職するそうだが、当然である。法相まで務めた者が金で票を集めた。それは民主主義の根幹につばを吐く行為であり、議員バッジを着ける資格はない。
「罪」は自民党本部から夫妻に送金された一億五千万円の選挙資金にはないのかと考え込む。党から当選のためにと出た金。夫妻にはどうあっても使わねばならない金に見えたかもしれない。
その金がでたらめな買収のきっかけになったとすれば、民主主義につばを吐いたのは決して夫妻二人だけではなかろうて。