(政界地獄耳) 10年前の教訓は生かされたか - 日刊スポーツ(2021年3月11日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202103110000168.html

東日本大震災から10年。多くの国民に悲しみと教訓を残した。津波の恐ろしさ、原発の危険性、防災意識、都市のインフラの脆弱(ぜいじゃく)性、インターネットの強さと弱さ、自衛隊の能力の高さ、政治のリーターシップ、役に立たない危機管理マニュアルや平時用の法律の壁。責任の所在。被災者の悲しみやこの10年の苦労。復興という言葉に踊らされた多くの出来事。

★それでも人々は生きようとしたし、故郷に戻りたいと願った。重箱の隅をつつけば、政治が果たすべき役割を怠ったり、きりがないと打ち切ったり、本気で向き合わないことが続いて、被災者に諦められたこともあったろう。多くの資金が投入され、過剰なインフラ整備や、過剰な資金投与が額面上行われたとしても、現場にそのすべてが投入されたと検証されただろうか。国民の思いや善意もどこまで反映されただろうか。国民は復興の名のもとにモヤモヤした10年を過ごしたのではないだろうか。

自民党は震災当時の民主党政権を批判し続けた。確かに首尾よくできたことばかりではないかも知れない。自民党の指摘通りのこともあるだろう。だが、今のコロナ禍を10年前になぞらえても、政権の失政や人災を感じさせる事態は多い。政治が実現できることは多い。その一方、その期待に応えてもらえない国民の喪失感も大きいということを民主党を批判し続けていた自民党は学んだろうか。教訓として生かしただろうか。自民党内では首相・菅義偉のことを危機管理にたけていることを政治家としての評価とする人たちがいる。官房長官を長く務めたことでそういう声が上がるのだろう。危機管理には2つの側面がある。災害を予見して事前に準備をして事態を早期収拾する。もう1つは突発的災害に政治的判断を的確にする情報量と判断力を持ち合わせているか。10年前の教訓は生かされたか。(K)※敬称略