<金口木舌>40年後の未来と卒業生 - 琉球新報(2021年3月6日)

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本部町の瀬底大橋が開通したのは40年近く前の1985年。それまで瀬底島の中学生は卒業後、船に乗って本島の高校に進学していた

▼「海が荒れるとフェリーが出ないので漁船に乗って本部高校に行ったが、波で制服がずぶぬれになった」。50代の女性は懐かしそうに振り返るが、車で往来することが当たり前の現在では想像しにくい光景だ
▼インフラの整備や科学技術の発展で私たちの生活は格段に便利になった。面白いのは、かつて存在しなかった情報通信技術のない時代の生活を、今の子どもたちになかなか理解してもらえないことだ
▼「ラインがなかったらどうやって連絡してたの」「ユーチューブはどうやって見てた」。緊張しながら友達の家に電話したことや、土日の番組を見なければ週明けの学校で話がついていけなかったことを説明しても「不便」の一言で片付けられる
▼持ち歩ける小型テレビで通話もゲームもできる漫画のような世界は現実になった。最先端技術から予測し得る未来を網羅した川口伸明氏著の「2060 未来創造の白地図」には、空飛ぶ車いすや天候に応じて色や形が変化する衣服が実現する未来が描かれている
▼今日は県内の公立中学校の卒業式。40年後に50代半ばになる卒業生は未来をどう創造し、牽引していくのか。夢のような沖縄に思いを巡らせ、子どもたちと語り合ってもいい。