<金口木舌>ヤナワラバー - 琉球新報(2021年2月7日)

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熊本県で弁護士として活動した板井優さん=旧姓・具志堅、那覇市出身=が亡くなってから11日で1年となる。享年70。水俣訴訟や公共事業のあり方を問う川辺川利水訴訟で原告弁護団の要だった

▼11月に本欄で紹介後、妻の八重子さんから板井さんの自著伝「裁判を住民とともに ヤナワラバー(悪ガキ)弁護士奮闘記」(熊本日日新聞社)の追悼版が届いた。母校首里高校での講演を収めたCDも付いていた
▼米統治下で人権を踏みにじられてきた沖縄と公害に苦しむ熊本を重ね、住民の尊厳回復に取り組んだ熱い思いが音声から伝わる。国や既得権益を握る側から見れば、民の側で追及する板井さんは決して屈しない「ヤナワラバー」だった
▼正義とは何かも問い掛けた。裁判で対峙(たいじ)する双方は自らを正義と信じる。独り善がりな正義を振りかざすのではなく、圧倒的多数の支持を得た「力ある正義」による解決。板井さんはその重要性を講演で強調した
▼2019年末、闘病中の板井さんは焼失した首里城車いすで回った。新基地建設が強行される名護市辺野古、二見も訪問した。八重子さんがメールで教えた
▼「人が作った仕組みは、必ず人が変えることができる」。板井さんが講演で最も伝えたかった言葉だ。晩年は沖縄と水俣をテーマに執筆したかったが、かなわなかった。「ヤナワラバー」の思いを読みたかった。

弁護士の肖像 坂井優(終戦間もない沖縄で誕生。祖国復帰運動に傾注する中で弁護士を志す) - Attorney's MAGAZINE Online 

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