(地獄耳) ワクチン接種 言葉遊びでは何も生まれない - 日刊スポーツ(2021年1月25日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202101250000096.html

★既に新型コロナウイルスのワクチン接種は先進国や中堅国など、世界40カ国で始まっている。ファイザー社のワクチンは20年11月中旬に95%の有効性を確認したとされるが、ワクチンでこれほどの有効性を確認されることも珍しい。欧米各国はリスクよりメリットが大きいとばかり早期の承認、接種を開始した。ところが日本はそうはいかない。21日の参院本会議で首相・菅義偉は「全体として3億1000万回分を確保できる見込みだ」としたが、政府が昨年7月ファイザーと契約したのは6月までに調達するもの。予定が遅れ「年内」に7200万人分の1億4400万本の調達しかできていない。しかし、これらはあくまで調達の話。接種の具体的な計画のめどは立っておらず、医療従事者への優先接種が決まっているだけだ。

★政府は英米3社から供給を受ける計画だが、うち英アストラゼネカ社と米モデルナ社のワクチンは治験の遅れから供給のめどが立っていない。当面は16歳以上への接種というのも苦肉の言い訳となる。しかし、コロナ禍で大混乱の米国は昨年末までに2000万人に接種予定が実際には300万人程度にとどまった。先行している米国でさえこのありさま。政府がもたもたしているのは各国の状況やワクチンの安全性を見ているだけでなく、日本の官僚システムにワクチン接種を組み込むことのしゃくし定規な対応だ。そこで首相は縦割り打破の行政改革相・河野太郎をワクチン担当に指名。適任かどうかはともかく早速暴れだした。20日、一般国民へのワクチン接種開始は5月ごろとする報道について「勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ」とした。だがこれは厚労省が出した工程表に基づくもの。22日に官房副長官坂井学が「6月までに接種対象となる全ての国民に必要な数量の確保は見込んでいる」と発言すれば「修正させていただく」といい、坂井も「修正しません」と反発。閣内の言葉遊びでは何も生まれない。先が思いやられる。(K)※敬称略