<金口木舌>舌禍が招く悲劇 - 琉球新報(2020年12月19日)

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何気なく発した言葉で人を傷つけた経験は誰にでもある。「舌を制御できる人は一人もいません。舌は、疲れを知らない悪で、死をもたらす毒に満ちています」。聖書のヤコブの手紙の一節である

イスラエルダビデ王も詩篇で「舌で過ちを犯さぬように」「私の口にくつわをはめておこう」と自身を戒める。言い損ないは取り返しがつかない。「駟(し)も舌に及ばず」は論語の言葉
▼リアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんをツイッターで中傷する投稿を繰り返したとして、侮辱容疑で大阪市の20代男性が書類送検された。木村さんは会員制交流サイト(SNS)で誹謗(ひぼう)中傷された後に死去した
▼テレビ越しに出演者を冷やかす「つぶやき」はままある。自宅ならその空間で収まるが、SNSだと想定を超えて広がり、他者の尊厳を傷つける場合もある。意図的な発信なら悪質だ
▼性暴力被害を公表したジャーナリスト伊藤詩織さんが、自身を中傷するツイートに「いいね」を押され名誉を傷つけられたとして、自民党杉田水脈衆院議員を提訴した。杉田議員は以前からツイッターで伊藤さんを中傷していた
▼沖縄には「くとぅば じんじけー(言葉は銭使い)」という黄金言葉がある。「言葉はお金のように大事に使いなさい」という意味だ。言葉は使い方次第。加害を繰り返してはならない。