(筆洗) ゴルフの世界にはこんな格言がある。「ゴルフなんてカンタンさ… - 東京新聞(2020年12月9日)

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ゴルフの世界にはこんな格言がある。「ゴルフなんてカンタンさ。消しゴムひとつで上達する」。かつての高名なプロ選手の言葉と聞く。
消しゴムを使った上達法でもあるのかと想像してしまうが、言わんとするのはゴルフは「カンタン」ではないということだろう。消しゴムでスコアを改ざんしても実力は上がらない。ダブルボギーに消しゴムを使い、パーと書き込みたくもなるが、それは無意味な上、紳士の競技ではなくなる。精進によって本物の腕を上げるしかない。そう教えている。
小学校の先生が使った「消しゴム」にため息が出る。仙台市の小学校。いじめの実態調査結果を担任の男性講師が勝手に良い「スコア」に書き直していたという。
いじめられたことが「ある」という児童の回答を「ない」と書き換え、「どのようないじめを受けたか」の回答については消し去った。
懲戒免職処分となったが、いじめの件数が少なければ、自分への評価が高くなると考えたという。これではまるで「いじめの解決なんてカンタンさ。消しゴムひとつで…」である。それでは決していじめが消えぬことがなぜ分からなかったか。
いじめが「ある」という回答は「助けて」という児童の叫び声である。それを無情の消しゴムがゴシゴシとなかったものとした。消しゴムの黒いカスが残る。学校や大人に対する子どもの不信感である。